「……」
別に、侑吏くんが喋ってくれないから寂しい、とかそういうわけじゃないよ。
物足りないとか、そういうわけでも断じてなくて、ただ。
ただ侑吏くんが変だと私まで調子が狂うというか……。
この空気に耐えられなくなった私は、ついに口を開いて。
「ゆう────」
「おまえさあ、」
まさかの同時。
重なった声に驚いて口を閉ざすと、侑吏くんは何かを探るみたいに私の瞳をじい、と見つめる。
そして、何を言い出すかと思えば。
「おまえ、本当に仁科に振られたわけ?」
「なっ!?」
投げかけられたデリカシーゼロの質問に思わず目を見開いた。
言葉を失って口をぱくぱくさせるけれど、侑吏くんはいたって真顔で。
その表情にむかむかして、唇をぎゅ、と噛み締めた。
「何でわざわざそんなこと、聞くのっ?」
嫌がらせとしか思えないんだけど、と睨むけれど侑吏くんは何も言わない。
つくづく嫌な人だな、と思いながらも渋々口を開いた。
「振られた、に決まってるじゃん……」
知ってるくせに。
弱々しくうつむいた私に侑吏くんは。
「本当に?」
「こんなことで嘘なんかつかないっ」
「じゃあ、」
「……っ!?」
ぐい、と引き寄せられて上半身が思いきり前に傾く。
後ろ首に圧迫感を感じて。
見れば、侑吏くんが強引に掴んでいるのは私のネクタイ。
「これは何なんだよ」