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優しさに見送られて落ちた眠りの先で、
久しぶりに夢を見た。



『花乃』



ハルが私の名前を呼ぶ。

その声、学校からの帰り道、それだけの条件で何の夢かはすぐにわかった。



三月、終業式の日、だ。

恨めしいほどよく晴れた日で、春めいた気温が優しくて、ハルみたいで。



『んー?』



生返事。
何気なく首を傾げた私はこのあとに告げられることなど知る由もなく。

随分とまあ、呑気なことである。




『別れよっか』

『……っ?』




理解できなかった。

全然意味がわからなくて、なのに口の中がカラカラに乾いていく。




『ごめん、別れよう』



追いうちのように、ハルの口がはっきり動いて。

嫌でも、理解するしかないと悟った。




『な、んで、急にそんなこと』

『ごめん』

『……私、何かしたっ?』

『ううん』

『私のこと、嫌いになった?』

『いいや』



ひとつひとつに、きっぱりと首を横に振るハル。

取り乱す私とは違って、彼は幾分も落ち着いていた。




『私のこと、もう好きじゃないってこと……?』




震える声で、そう尋ねた私にハルは少し黙り込んで。