「……」
ひとまず、呼吸をしていることを確認して息をつく。
つうか、こいつはなんでこんなところにいるんだよ。
そんで、なんで倒れて……。
いつもだったら、きゃんきゃんうるさい彼女がこうも静かだと変な感じだ。
とりあえず、保健室にでも連れていくか?と彼女に手を伸ばした、瞬間。
「触るな」
ドスの効いた低い声が廊下に響いた。
威圧感のあるそれに、顔を上げる、と。
「……仁科」
呟いた俺には目もくれずに、麗し王子様は花乃に近づいて。
そっと、壊れ物でも扱うかのように抱き上げた。
いわゆる、姫抱っこってやつ。
「そいつ、多分急に倒れて─────」
仁科の登場を怪訝に思いつつも、一応状況を説明しようと口を開いたけれど。
「知ってる」
冷ややかな声。
鋭い口調に押し黙らされる。
たぶん、“こっち” の仁科を花乃は知らない。
爽やか王子様なんて最初から存在しない。
仁科春樹が優しいのは、ずっと “お姫様” にだけだ。
花乃は、それを、知らない。
「知ってるから、来たんだよ」
「……そう」
仁科の言っている意味はよくわからなかった。
知っている?
……何を。



