「……は、あっ」
浅い呼吸を繰り返しながら。
雨が、降る。
そう思った瞬間。
────ザアアアア
窓を叩きつけるような、激しい雨音。
思わず耳を塞いだ。
「……はっ、だ、誰か……」
ぐらん、と視界が揺れる。
目眩だ。
息が、上手くできない。
生理的に浮かんだ涙で視界が滲んで、だんだん白んでゆく。
「……ハル……っ」
吐息にもならないような声を絞り出す。
頭ががんがんする。
苦しい、怖い。
「……うっ、」
かくん、と膝が折れた。
身体が傾いていくけれど、立て直す術はない。
背中を打ち付けた衝撃と痛みが引き金で、視界がホワイトアウトしていく。
雨音、薬の匂い、白。
走馬灯みたいに、駆け巡る。
でも、走馬灯みたいに優しいものじゃない。
容赦無く叩きつけられるのは、現実。
─────「花乃っ?!」
誰かの焦燥した声が耳に届いたところで、意識を手放した。
───私がほんとうに苦手なのは、雨だ。
雨が降るから梅雨が苦手になった。
“ひとりにしないで”
雨の匂いと音が連れてくるのは、いつも─────。



