そこで、ふと数時間前の麻美との会話が頭の中をよぎった。
やっぱり、麻美の目がおかしいんだと確信する。
「……ねえ、侑吏くん」
私の呼びかけに、侑吏くんは返事はしないまま。
視線だけこちらに流した。
「私と侑吏くんって仲良しだと思う?」
「はあ?」
思いっきり怪訝な顔を向けられて。
だよね、その反応になるよね!と逆にほっとする。
「やっぱり仲良くなんてないよね!」
「……」
「麻美が変なこと言ってくるから!そんなこと、あるわけないのにね?」
あはは、と笑い飛ばすと。
そんな私をじっと見つめた佐和くんは。
小さく息をついて、するり、と。
私の手の甲を軽く指先で撫ぜた。
その柔く、蠱惑的な感触に驚いて、びくりと肩を震わせる。
「……仲良くはないだろーな。おまえの言う通り」
「っ?」
侑吏くんの声が、なんか。
なんか……。
ぞわわ、としてこの空気に耐えきれなくなった、ちょうどそのタイミングで。
昼休みが終わる五分前の予鈴が鳴り響いた。
「じゃ、俺はこのプリントの続きやるから、そっちよろしく」
「……うん」
自分の荷物をまとめてさっさと出て行った侑吏くん。
残された私も慌てて荷物を片付けて。
侑吏くんが私に託したプリントを見ると、予算を算出するものだった。
機械的な作業で済む課題。
私がこっちの方が得意だと、わかっていて、あえてだろうか。
……自己中なんだか、優しいんだか、よくわからないな。
教室に戻る途中、窓から吹き込んで私の頬をゆるく撫ぜた風は梅雨に入ったからだろうか、蒸し暑く感じた。



