「……仁科」
「……?」
私の方をちらりと見て、佐和くんは口を開く。
「どこがいいんだよ。 ああいう物腰柔らかそうな奴ほど腹黒いし、何考えてるかわかんねー。 現におまえだって捨てられてんじゃん。 人のことなんてどうでもいいんだろ。 おまえのことだって結局どうでもよかったから切っ────」
「ハルのことそれ以上悪く言ったら殺す」
どす黒い声。
無意識に放ったその声が自分のものであると気づくのに少し時間がかかった。
「……」
黙りこんだ佐和くんからは何の反応もない。
突然訪れた沈黙に耐えきれず。
「佐和くん? 無視はやめてよ」
そう言って顔をのぞき込む、と。
「……ゆうり」
「……え?」
「侑吏、だって」
聞こえていないわけじゃない、けれど。
「なに、自己紹介……?」
侑吏。
佐和くんの下の名前。
それくらい知ってるけど、と思いながら素で首を傾げる。
すると、なぜか鋭い視線が向けられた。
え、何、怖い。
身構えた私に佐和くんは小さく息をついて。
「馬鹿。侑吏って呼べばっつってんの。阿呆」
馬鹿とか阿保とかうるさいな。
ボキャブラリー、幼稚園児レベルかよ。
思わず顔をしかめる。
それに、いきなり何を言い出すの。
突っ込みどころ満載の状況に面食らっていると、佐和くんは追いうちをかけるみたいに再度口を開く。



