私、今ここにいる意味あるのかな、なんてぼんやりと考えながら、淀みなく動く佐和くんの左手をじいっと見つめる。
肌は綺麗で、でも骨ばっていてごつごつしていて大きくて。
私とは全然違うなあ。
……そういえば。
「さっき、下の名前で呼んだよね? 花乃って」
手を止めて少し顔をあげた佐和くん。
だけど。
「……いや、呼んでない」
一瞬の沈黙のあと、彼はきっぱりと首を横に振った。
じゃあ、私の気のせい? 空耳?
ううん、そんなはずはない。
聞いたもん、この耳で。絶対に。
どうして名前で呼んだの、とか
どうしてごまかすの、とか気になることは色々あるのに。
しらばっくれる佐和くんを横目でにらむと、当の本人はプリントに指先を這わせていて。
何をしているんだろう、と不思議に思っていると。
「久住さん、このプリントに何時間かけたの」
「え? えっと……まあまあ、だよ。ちょっとだけ! 一時間とか二時間!」
見栄を張ってサバを読む。
すると。
「うそつき」
思わずごくり、唾を呑んだ。
なんで、そんな断言できるの。
吃驚した私を見て、ふっと笑った佐和くんは再度口を開く。
「何回も書いたり消したりしねーとこんな跡にはならねーんだよ」
つう、と佐和くんの指先がまた紙の上を走った。



