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来たる翌日、金曜日。


「……はあああ」



既に人もまばらになった教室で、机に頬をぺたりとつけてうなだれた。



その理由は言うまでもなく。
だらんと垂らした腕の先にはためく一枚の紙。



もう一週間も悩まされ続けている実行委員の課題だ。



昨日、家に帰ってからも力尽きるまで、それから休み時間も返上して真剣に向き合っていたのだけれど、てんで駄目だった。




昨日の白紙状態からほとんど進んでいない。
正確には一進一退を繰り返しているのだけれど、進捗はほぼゼロというわけで。



あーあ、今日中に提出しなきゃいけないのに。
もう放課後、なのに。



やらなきゃ、と思うほど
頭がぐるぐるしてはかどらない。


こんなんじゃ、駄目だ。
一生かかっても終わらない。



しばし、プリントと不毛なにらめっこを続けたあと。




「……」




だめだ。

煮詰まりすぎて頭のなかがごちゃごちゃしてきた。


ふう、と一息ついておもむろに立ち上がる。



気分転換に飲み物でも買ってこようかな。
名案かも。



疲れきった脳が糖分を欲している。
一旦休憩したほうが、効率も上がるかもしれない。


そうと決まれば、と自販機に向かうべく教室を出────ようとした。




「花乃」



「……え?」





足がぴたりとその場に縫い留められる。



名前。

私の名前を『花乃』と下の名前で呼ぶのはこの学校ではふたりだ。



ハルと麻美。




だけど、今私を呼んだ声はそのどちらのものでもなかった。





「やっぱり、全然終わってねーじゃん」




戸惑い固まる私のことなんて気にも留めずに、いつもと何ら変わらない口調で話しかけてくる。



……佐和くん。