「っ、佐和くん。……何の用」


無意識に声が低くなった。
そんな私の態度をものともせず、佐和くんは淡々とした口調で。



「実行委員の課題、進んでる?明日提出だけど」


ちょうどため息の原因となっていたことについてピンポイントで触れられて、思わずびくっと肩が揺れた。


手に持っていた該当のプリント。

まだ真っ白であることをなんとなく知られたくなくて、思わず背中にさっと隠す。



「す、進んでるよ。順調だよ」


「……そう。ならいいけど」




全然順調じゃない。強がりもいいところだ。

だけど、それを佐和くんに知られるのは癪だった。



気まずくて視線を逸らした私に、佐和くんはすう、と目を細めた。


綺麗な深い色の瞳は奥底を見透かされそうで、畏怖の対象だ。





「おまえ、本当は─────」




佐和くんの薄い唇がなにかを語ろうと開いて。
だけど、肝心のところが音になる前に。




「花乃」




別の声が遮った。
あまくて、まっすぐな声。


そして、私にとって特別な、声。