面倒に厄介純情。
……そこまで言うことないじゃん。

カチンと頭に来た。




「なんで私が悪いみたいな言い方するの!? 悪いことしてるのは佐和くんの方じゃん! だいたい彼女じゃない女の子とそーいうことするなんて、頭おかしいよ!!」




勢いあまって立ち上がれば、その反動で椅子がガタンと大きな音を立てた。


佐和くんはいたって涼しい顔して座ったまま。




「うるさ。つーか、久住さんに関係ないよね。他人(ひと)のことに口出ししないでくれる?」



関係ない。
たしかにそうだけど。

はっきり線引きされたことに、なぜかむっとした。



そして、最悪だったのは次の一言。




「そんなんだから仁科に振られんだよ」




息が詰まる。

望んでもないのに、目の端が熱くなってくる。


嫌だ。こんなところで泣くもんか。
私が涙を流すことをゆるしたのは “彼” の前だけなのに。




ぐっと堪えて声を絞り出した。




「私、帰る」

「は? まだ日直の仕事───」




引き留めようとする佐和くんの言葉を遮って、震えてしまわないようにお腹の底から声を出した。





「佐和くんなんか、大ッ嫌い!!!」