「寂しかったんです。
元気になったら病室から出れたらまた会えると思ってた。だけど、お兄ちゃんはもういなくて。お姉ちゃんは、私のこと覚えてなくて、辛かった。もう死んじゃいたいって、せっかく助かったのに、そんなこと思って。

…でも、目を覚ましてからの私の病状は信じられないくらい安定していて…。

それで、きっと、お兄ちゃんが力を貸してくれてるんだって、思ったんです。
だから私は、いつかまた、お姉ちゃんと出逢えるように、その為に元気にならなくちゃって」


鈴ちゃんの言葉に、私は溢れる涙を拭うことも無く、立ち尽くした。


「…やっぱり、元気になってよかった。お兄ちゃんが私たちをもう一度、会わせてくれたんですね」


鈴ちゃんが見上げた先には、ひとつのお墓。

その横顔は余りにも大人びて綺麗で、私の視線は奪われる。


「そうだよね。大翔はそういう人だった、よね、」


大翔の笑顔を思い出して、泣きながら呟く私。

鈴ちゃんも、笑顔で涙を拭った。


そんな余韻の中、俊くんを待たせている事に気づき、私は話を切り上げる。


「鈴ちゃん、またゆっくり話そ?」

「はいっ!!」


笑顔で返事をした鈴ちゃんと連絡先を交換して、そこで別れた。


そして、丘を駆け登り、俊くんの元へと向かう。

俊くんは既に、お墓の前にしゃがんで手を合わせていた。

私は、そのとなりにしゃがみ、同じように手を合わせる。


目を瞑ったまま、少しだけ、何を話したらいいのかと考えを巡らせて、
私は、脳内で語りかけた。