そんな私に「大丈夫?」と声をかけながら、俊くんは続けた。
「覚えてるかな。菜摘が入院してから初めて会った日。」
「…うん。」
そのときの事は、鮮明に覚えていた。
あのときの俊くんの顔は本当に辛そうで、今でも忘れられない。
「俺、あの日、全然菜摘を見れなかった」
「うん、気付いていたよ。あの時は、シュンくんに嫌われちゃったかなぁ、こんな姿見せたくなかったなぁって思ってた」
私の言葉に俊くんは申し訳なさそうに顔を曇らせた。
「ごめん、あの日の俺、最悪だったよな」
力のない俊くんの言葉に、思わず首を振る。
そんな私の頭に優しく触れながら俊くんは続けた。
「実はあの後、病院の廊下で綾羽ちゃんたちと少し話してたんだ。
綾羽ちゃん、すごく大人で、俺が一番子供なんだなって思った」
1つ1つ言葉を選ぶようにゆっくりと話し出す。
私は俊くんの話に自然と入り込んでいった。