「…そっか。うん。よし、行くか!」
俊くんがそう言って立ち上がったのは、しばらくしてからだった。
「ごめん、大事な思い出だったかな、もし忘れちゃってたら教えて…?」
「ううん、大丈夫だよ、大丈夫。」
どこか、自分に言い聞かせるようにも聞こえる俊くんの声。
申し訳のない気持ちで顔を曇らせると、
俊くんは私を安心させるように優しく笑って、手を握ってくれた。
きゅっと握られた手をそのままに、私たちは家を出た。
「…あれから、7年も経つんだな……」
駅に向かう道で、ゆっくり歩きながら、俊くんが呟く。
「ふふ、そうだね。7年、早かったね」
そう笑って、私はあのときのことを思い返した。