病室を見て、私の頭は真っ白になる。
「……ひろ、と。大翔は……?」
病室のベッドには大翔は寝ていなくて。
その代わりに数人の看護師さんが、室内をバタバタ走り回っていた。
「……あっ、なっちゃん…!!」
その中の1人だった葉瑠姉が、焦った顔で振り向く。
私は、その姿に、少し後ずさった。
「…菜摘?大丈夫か!?」
シュンくんのそんな声は私には届いていなくって。
「…聞きたくない。そんなわけない。聞きたくない…」
そんなことを呟きながら、首を振り、後ずさっていた。
私のそんな様子に、葉瑠姉は戸惑って、シュンくんの方を見る。
「シュンくんだよね?
大翔くんの様態が悪化して、手術室に運ばれたの。なっちゃん連れていってあげて。
あと、これなっちゃんに。」
シュンくんは、葉瑠姉に差し出された何かを片手で受け取って、その反対の手で私の手をとる。
私は真っ青な顔をしたまま、彼に引っ張られていった。