ちょうど、日付が変わるくらいの時間帯。

静かに病室の扉が開かれた。


…見回りの看護師さんだな。


そう思った私は布団に潜り、寝たふりをする。


ふと耳に入った、聞き覚えのある優しい笑い声。

布団から目だけを出してみると、そこに立っていたのは大翔だった。


…え、なんで!?


私は、驚きのあまり飛び起きて声を出しそうになる。

それに気づいた大翔は、いつかの夜のように私の唇に人差し指を当てた。


「…静かに。」


私は、赤面を隠すようにこくこくと頷く。


「菜摘は、きっと起きてるだろうと思って。屋上に行かない?」

「…うん、行く。」


優しく微笑みながら出された手のひらを、私はしっかりと握って、屋上へと向かった。