急いで教室へ戻ると次の先生は既に来ていたけど、まだ雑談をしていたようで、私は軽く謝ってから席につく。

私が席につくと、授業が始まった。


セーフ…。

小さく、安堵のため息をこぼすと隣から恭弥の視線を感じた。


「…うん?」


どうしたの?という風に見上げると、恭弥はクールなイメージとはかけ離れた、くしゃっとした笑顔を見せた。


「え、なになに?」


私が小声で聞き返すと、恭弥は自分の前髪を指差した。


「上がってる。また走ってきたんだ?」

「そりゃあ走るよー。授業遅れちゃまずいし。」


私は、前髪を直しながら言う。


「そんなの、先生に呼ばれてましたって言えばいいじゃん。」

「そういうわけにもいかないよ。」


私が言うと、綾羽と紗南が前から私たちの方を振り返る。


「無理無理、なつはそういうところ真面目だから」

「そうそう、なっちゃんは意地でも間に合うようにくるからねっ」


「あはは、すげーよな菜摘。」


後ろの晴樹も笑いながら言ってきた。


「まぁ、そこが菜摘の良いところだよな」

「…えー、なんか褒められてる気がしない」


恭弥の言葉に言い返すと「何でだよ」と笑った。