「いいか?年越したらすぐに受験。
今年は大晦日だとかお年玉だとかはしゃぎすぎないように。」
毎日毎日、受験の話をする先生に、クラスメートはうんざりしている。
私が横目でクラスを見渡すと、先生が話しているのにも関わらずノートを開く生徒や、単語帳をめくる生徒。
読書を始める生徒までいた。
先生自身も、その様子には慣れてしまったようで、特に何も言わずホームルームを終わらす。
「話は以上。挨拶したら、クラス委員、返却のノート取りに来てくれ。」
「…はい。」
前の席に座る綾羽と紗南から「ドンマイ」という視線が向けられる。
その先生の言葉を最後に、ノートやら本やらを閉じ、起立する生徒。
日直が号令をかける前から動き出す1部の生徒につられるようにみんなも起立した。
「気をつけ、れ……」
「「「あざーした!!」」」
挨拶をすると同時にクラスを飛び出していく数名に、すぐさま話し始める女子生徒。
受験期で少しピリついた空気の教室に、居心地の悪さを感じつつ、クラス委員の私は先生を追って教室を出た。