そんな鈴ちゃんは今日、手にリンゴを持っている。

細く小さな手をしている鈴ちゃんには、両手でも足りないくらい立派な大きなりんご。


私の視線を感じ取ったのか、鈴ちゃんは嬉しそうに笑った。


「パパが、お見舞いで送ってくれたの!!」

「そーなんだ!良かったじゃん!」

「うんっ!!だから、お姉ちゃん切って?一緒に食べよ!」


私は、驚いたけど、慌てて首を横に振る。


「だめだよっ!せっかくのお見舞いだから、パパやママと一緒に食べなきゃ!」


私がそう言うと、鈴ちゃんは困ったように眉を下げて笑った。


「…パパもママも、病院来てくれないの。」


寂しさを隠すように、決して笑顔を崩さない、小さな小さな女の子。