「それじゃあ立花。また来るから。
ちゃんと治して復学する時のために、勉強はさぼるなよ」
お母さんたちや新川先生との話を終わらせたたっつー先生は、私に声をかける。
「はあい、…あっ待って先生!」
私は、ドアに手をかけた先生を呼び止めた。
たっつー先生はくるりと反転して私を見る。
「どーした?」
「みんなには、私は用事で休むってことにしてください。」
私の言葉に、たっつー先生は真面目な顔で聞き返した。
「どうしてだ?」
「言ってほしくないんです。」
…だって、明日から抗がん剤治療するんだよ?
副作用があるんだ。
痩せてガリガリになっちゃうかもしれないし、
髪の毛も……抜けちゃうかもしれないんだ。
そんな弱った姿、絶対に見せたくない。
私は、しっかりと先生を見てから、笑った。
「大丈夫です!こんな病気すぐ治してやるから!そしたら、何事もなかったように学校行っちゃうんだから!!」
その言葉に、たっつー先生も笑って答えた。
「分かったよ。立花、待ってるからな。」
先生が出ていくのを見つめたまま、私はお兄ちゃんにも言う。
「…お兄ちゃんも。」
「分かってるよ。言わねーから早く治せよ。」
ポンっと頭に置かれた手のひら。
あまりにも優しい、その温かさに、私は少し泣きそうになった。