黄昏色の空気が、雄太の横顔を柔らかな陰影で飾って、悲しいくらいきれいだ。


優しく細められた二重瞼の目が見つめるのは、頭ひとつ背の低い、あの子。


あたしではない女の子。


今あたしの目の前で彼女の手を包んでいる、あの大きな手のひらの感触を覚えてる。


固くて、温かくて、力強くて心から安心できた。


間違いなく、あたしの手を握ってくれていたのに……。


呆然と立ちすくむあたしから、ふたりが横断歩道のメロディーと一緒に、どんどん遠ざかって行く。


その姿が人混みに紛れて見えなくなっても、あたしは一歩も動けなかった。


やがて人と車の流れが変わって、ようやくあたしの中の時間も流れ始めて。


でも自分が今、なにをどうすればいいのかぜんぜんわからない。


すぐ近くの花壇の縁にペタンと座って、無意味に空を見上げることしかできなかった。


「…………」


思考停止の状態で見上げる夕焼け空は、鮮やかな朱色と薄い金色がどこまでも混じり合い、波のような形の大きな雲が輝いている。