キミと見た最後の線香花火。

 社会人になった僕は、夏期休暇のため実家に帰省する。

 久し振りに降り立った駅から見えたのは、昔見たゆっくりと夜を連れて落ちていく夕日。

 橙色を纏い遠くの山々に沈んでいく夕日は、感傷が芽生える様なほど綺麗な景色だった。

 もうすぐ、陽が完全に暮れる。

 駅から出て、家路に向かっていた足が無意識に止まる。

 あのひと夏の情景が、目の前の景色と重なり鮮明に蘇る。

 ──目を見開く。

 いま僕の目の前に居るのは、僕がずっと逢いたかった人。

 あの時より少し大人びた表情をした君は、顔に掛かる長い髪の毛を右手で押さえながら、僕を見て優しく微笑んでいた。

 瞳には、うっすらと涙を浮かべて。

「……あの時は、勝手に消えてごめんね。おかえり」

 髪を風に靡かせたまま、沈みかけている夕日を背に静かに君は言った。

「……ただいま」

 そして今、四年越しの想いを僕は言葉に込めて、くしゃくしゃな泣き顔で君に返そうと思う。

「──僕は君が好きです」

 涙で濡れた君の瞳が、嬉しそうに僕を見つめていた。