『マッチを一つ差し上げます』

長月遥がお芝居をすることになった。

クラスの出し物。

「『マッチ売りの少女』か」とイデアル。

だらだらと放課後、俺とイデアルは水守市の湿地帯や田んぼのなかの車道を歩く。

水守市の中央部にはごく小規模ながらも、商業圏があった。

「そうだ。
また、釣りでもしないか?」とイデアル。

「いいなあ。それ」と俺。

さっそく下見。近所の池だ。

缶コーヒーを飲む。

三月の太陽。春分がやはり近かった。