·季節は巡りて。

イデアルはのんびりと携帯CDプレーヤーでCDを聴いていた。野原を歩く。月日は百代の過客。

これがリッピング作業をせずに乾電池だけでCDが聴けるから便利なのである。

長月遥とともに桜草やコケの群生地を調べる。

地道な作業だ。

植物の品種をノートに記入していく。
それは編み物をしているようなものだった。調子が良いときは軽く毛糸が縫い合わされるが、いったん気持ちが沈みとたちまち手が重くなるような作業だった。

しかし、水守市のデータを保存することは必要な作業だった。だからこそ気持ちなどをつねに高く保つ必要があった。

それは編み物をしていた古い時代の考え方かもしれない、とそうイデアルは思うこともあった。たとえば意識を眠らせること。あるいは気にしすぎないことも必要なのだ。