――だからこそ言えるのは、



「なんか、用?」



なんだよ、『おいコラ柾樹』って。

僕はそういう“読まない空気”みたいなのがいちばん嫌いなんだ。



「……いや、その」



あまりにも温度のない声で答えたからか、田辺は面食らったように口ごもった。


しかしさすがにそのままでは終われないと思ったようで、僕ではなく真宮を見ながら吐き捨てるように口を開いた。



「真宮もいい加減どうにかしろよ。もどかしいんだよ。柾樹もへなへなしてねぇで、たまには男らしくなりやがれアホ」



なんだ、それは。



「悪いけど……意味がよくわからないな」



嘘だ。なんとなくわかった。


要約するとこの男は真宮が好きなんだろう。


それでいて自分の心を押し隠し、まったくもってありえない可能性の話を持ちかけているわけだ。


なんという余計な世話。呆れるほど純真なヤツだ。


ここまで言われても状況をよくわかっていない真宮は、田辺と僕を交互に見ながら「え? え? どういうこと?」としきりに首をかしげている。