むすっと膨れていると、美佳は切りそろえられた髪を華麗にはらってあたしの鼻に指を突きつけてきた。


むんと豚鼻になって、きっと相当ぶすな顔が晒されているであろうものの、美佳相手だとされるがままになってしまう。



「まずひとつめ、ゆずは可愛い。おーけー?」

「のーおーけー」

「ふたつめ、瀬河はあれでもわりとあんたが好き。おーけー?」

「のーのーおーけー」

「みっつめ、もう1回ちゃんと告白してらっしゃい!」

「ひぇぇぇ! ムリムリのムリ〜〜!!」



ピンッと鼻をはじかれる。


あたしは両目いっぱいに涙をためながら、ぶんぶんと首を横に振った。


柾樹はあれでいて結構ハッキリしているのだ。


無愛想だし、口数も多くないし、そもそもあたしの名前すら覚えてくれているのかわからない。


名字でさえ、たまに……本当にごく稀に呼んでくれるだけで、あたしが自分から柾樹に関わりに行かないときっとすぐ忘れられてしまう。