ボーガンを地面に打つ振動で、空に舞い上がった。

びゅんびゅんと勢いは風を起こし、やや寒い。

そのボーガンは軽いくせに矢を打つ時の射撃主に返ってくる偉力が強すぎるため、的に当てて、射撃能力を競うよりも、別の用途に使う方がむいていた。だから俺は考え中だった。どう使うのかを。その時、偶然強い風がボーガンの引き金辺りで吹き、この様なのだ。
だけど田舎の夜空は綺麗で、折角だからこの空中散歩を最後まで楽しみたいと想った。

矢の数は残り5本。それが最高の滞空時間になる。普通に失敗したら、もっと滞空時間が減る。無事に着陸する事も大切だ。そんな事を考えていたら一発目の偉力が段々失われてきて、地面に足が付きそうだったから、慌てて二発目の矢を打った。それは失敗することもなく、俺の身体を宙にあげ、俺の身体は上空を滑走する大気に届いた。すると軽さから大気に流される俺の身体。俺はかなり出発点を離れた身体に不安を感じながらも夜間飛行を楽しんだ。家々の明かりが足下に、空の星達が頭上にと綺麗な景色に残りの矢の数を忘れそうになる。次の矢を打った後は、海岸線なんか見たいなと想いながら矢を打つ準備をした。でも田舎の海なので何らかの明かりもなく、暗い海面を濃縮しただけの様だった。
『残念』
心の中で呟いた俺はそろそろ着地して自宅に帰る事を意識した。大気に流され意図した場所に運ばれない可能性を考え、静かに着地したら、もうボーガンの不思議な力には、頼らないと想った。