もしかしたら、先ほどの電話で彼女が言っていた『なつみのおかげでいいほうに変われた』というのは、このことだったのかもしれない。

しかし、私は本当に立派な人間ではないのだ。数か月前にも、倉橋さんと社長との仲を少しばかり引っ掻き回したことがあるのだから。


「……耀は私のことをまだ買い被ってる。だって私、好きな人が同じだった子を諦めさせようとして、嘘ついたり毒吐きまくったりしてたのよ。そんなことしたって、自分が嫌になるだけだったのにね」


私は自嘲気味の笑いと共に、過去の行いを打ち明けた。耀の前では、飾らない自分をさらけ出せる。


「結局ライバルに謝って終わるっていう、惨めなものだったわ。だから……カッコいいのは耀のほうだよ」


すんなりと偽りのない思いを口に出すと、真剣に耳を傾けている彼がピクリと反応を示した。


「卒業してから知ったの、あんたが私の味方をしてくれてたこと。そんな人絶対いないと思ってたから、すごく嬉しかったし、罪悪感でいっぱいになった」


汗を掻いたグラスを眺めながら話す私を、彼が澄んだ瞳でじっと見つめる。

ためらいがちに、でもちゃんと視線を合わせ、紗菜のアドバイス通りに素直な気持ちを伝える。