────まただ。
遠くの方で、笛と太鼓の音色が聞こえる。にぎわう声に大勢の足音、楽しそうに笑う声。
『次は三門さまが鬼だよ、さあさ、逃げろ!』
『逃げろ逃げろ、三門さまが鬼だ!』
子どものような幼くて高い声が、直ぐ近くで聞こえた気がした。
これは夢だろうか、それとも。
どどどどどっ────。いくつもの足音が部屋の前を通り過ぎ、それに伴い床が揺れる。
うつらうつらしていた意識が、次第にはっきりとしていく。
「こら、静かにしなさい! 自宅の方へは入ってはいけないって、いつも言っているでしょっ」
三門さんのひそめられた声が聞こえ、そして部屋の前の廊下がきしむ音。
間違いない、これは夢じゃない。

