次の日。
いつものように身支度を整えてから本殿へ向かうと、楽しそうに談笑する話し声が聞こえた。朝拝に参加したい参拝者が訪ねてきたのだろうか、と特に何も気に留めることなく中へ入る。すると中にいたふたりが同時に振り返った。
三門さんの前に座っているのは白髪交じりの男性で、初めて会う人だった。白衣に、藤に文様が薄く描かれた紫色の袴を身に着けた五十代くらいの男のひと。三門さんとそっくりな優しげな目の人だった。私の姿を捉えるなり、少し驚いたように目を見開く、そして「ひさしぶりだね、大きくなったんだねえ」と感慨深げに言った。
初めて会った人だと思っていたが、相手は私のことをよく知っている口ぶりだった。
「えっと……おはようございます」
困惑気味に頭を下げる。
「おはよう、おいで麻ちゃん」
三門さんが手招きをしたので、小走りで歩み寄って隣に腰を下ろした。

