お父さんは二時間ほど社でのんびり過ごすと、「じゃあそろそろ」と腰を浮かせた。三門さんと社頭まで見送る。
本殿の前まで来ると、お父さんはふくりとみくりがいつも座っている台を怪訝な顔で見上げる。
「ここに、狛狐があったよね」
「へ⁉ あ、そうなの、今は掃除中で、別のところに居て」
どきどきしながら慌てて言い繕うと、三門さんが小さく吹き出す。
「一度いらっしゃっただけなのに、よく覚えているんですね」
「大切な一日だったからなあ。でも、それを言うのなら、僕がここへ来たときは三門君だってまだ六つくらいだったじゃないか」
お父さんは昔に思いを馳せるように目を細めた。ひとり首を傾げていると、三門さんが私の耳元で「結婚の挨拶に来たんだよ」と教えてくれる。へえ、と目を輝かせれば、お父さんは少し恥ずかしそうに頬をかいた。
「じゃあ、ホテルに戻るよ。あと数日だけれど、三門君の言うことをよく聞いて、手伝いなさい。荷造りも早めにしておくんだよ」

