片手をあげて歩み寄ったお父さんに、三門さんは笑みを浮かべながら頭を下げた。
「圭太さん、お久しぶりです」
「久しぶり、三門くん。麻がお世話になっています」
え、え、とおろおろしていると、三門さんはお父さんには見えないように唇に人差し指を当ててにっこりと笑った。
「どうぞ、お茶を淹れますから」と中へ案内する三門さんに不安を抱きながらついていく。そしてお父さんを居間に案内すると、三門さんは台所へ入っていく。慌ててその背中を追いかけた。
「三門さん、いつもは三日間眠り続けるって」
「圭太さんから四日に行くって連絡があったから。そう言えば麻ちゃんに言ってなかったね。ごめん」
「それは構わないんですけど、えっと……大丈夫ですか?」
「んー、あと四十八時間は眠りたいけど、大丈夫」
一つ大きな欠伸をした三門さん。大丈夫と言いながら、やかんから水があふれ出しているのに気が付かず、あまつさえ立ったまま舟を漕ぎ始めた。
慌てて手を伸ばして蛇口を閉めると、「ああ、ごめんね。ありがとう」と目頭を擦る。
「私も手伝います」
「じゃあ、僕が眠りそうになったら激しめに揺すって」
はは、と笑った三門さん。冗談に聞こえない冗談だ。

