「お父さん、どうして、だって仕事」
お父さんは単身赴任をしていて、年に三回くらいしか家に帰ってこない。去年も最後に会ったのは、夏休みの時期だった。
「会社も冬休み、だからお父さんとお母さんで麻を迎えに来たんだ」
お母さん、迎えに来た。そのふたつの言葉にハッとした。辺りを見回して、困惑気味にお父さんを見上げる。
「お母さんは疲れたみたいだからホテルで休んでいるよ」
「そう、なんだ。ホテルに泊まるの……?」
「うん。せっかく実家に帰るんだから実家に泊まったらいいのにって言ったら、喧嘩になっちゃったよ」
首の後ろを擦って困ったように笑う。何とも言えない気持ちで俯く。
「お母さん、明日は来るよ。そうだ、三門くんに挨拶したいんだけど、どこにいる?」
そういって社務所に向かって歩き出したお父さんの隣に慌てて並ぶ。
「えっと、三門さんは今ちょっと」
「あ、三門くんだ」
前を向いたまま声を弾ませたお父さんに「え?」と目を見開いて視線を向ける。普段と同じ水色の袴をはいた姿の三門さんが社務所から丁度出てきたところだった。

