「さむっ」
声に出してみれば余計に寒さが増した気がして、両腕を擦りながらマフラーに顔を埋めた。
裁縫を終えると社頭を掃くために外に出てきたが、太陽がしっかり出ている昼下がりでも寒いことに変わりはなかった。
もしかして「寒い」って言った言霊のせい? なんてことを考えながら、一緒に体も温めようとせっせと箒を動かした。
「今日はあったかい。今日はあったかい」と唱えながら箒を動かしていたその時。
「────麻?」
聞きなれた声で名前が呼ばれて、弾けるように振り返った。
鳥居に繋がる階段の前に立つその人。私と目が合うなり、眼鏡の奥の瞳が見開かれた。
「巫女さんの格好だからびっくりした。元気にしてた? 三門くんに迷惑かけてない?」
目尻に皺がよる穏やかで優しい笑顔を久しぶりに見て、一気に胸が熱くなる。箒から手を放し、勢いよくその人に駆け寄った。
「お父さん!」
頭に手が乗せられる。三門さんとはすこし違った、よく馴染んだ手だ。
「あれ、麻、背が伸びたんじゃないか? 見ない間にずいぶん大人っぽくなったんだね」
のんびりと笑うお父さんに、慌てて問いかける。

