「────白すことを聞こし召せと 恐み恐みも白す」
三門さんが小さく息を吐き、祝詞が終わる。
背筋を伸ばし真っ直ぐと前を見つめたその瞬間、ふわりと私の前髪が浮いた。
どこからともなく吹いた風は、まるで私の頬を優しくなでるように吹き抜ける。
驚き、目を丸くしてまじまじと祭壇を見つめる。
しかし一番祭壇に近い位置で祝詞奏上を行っていた三門さんは、特にこれといった反応しておらず、淡々と進めていく。
いったい、今の不思議な風はなんだったのだろう。
大幣が揺れる音を聞きながら、ほんのりと熱くなった胸を押さえた。

