「まずは神職さんが行う二礼二拍手一礼からやってみようか。礼は体を九十度に曲げるんだけど、最初と最後に揖(ゆう)っていう小さな礼を入れるんだよ。そうだなあ、近所のおばさんに「こんにちは~」って軽く挨拶する感じ」
三門さんの物言いに思わず笑みが零れる。言われた通りに最初と最後に揖を挟み、九十度の礼を繰り返す。
上手だよ、と微笑んだ三門さんは姿勢を正すと、立ち上がって祭壇の前へと移動する。
前に立つと、静かに紙を広げた。そしてすっと息を吸う。
「掛けまくも畏き 伊邪那岐大神 筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原に 禊ぎ祓へ給ひし時に……」
これが、「祓詞」なのだろうか。
まるで白鳥が水面を滑っていくように、静かだけれど美しさがあって凛とした声だった。

