「────お前の名前はケヤキ。今日からケヤキと名乗りなさい」
苔むした木々が鬱蒼と茂る森の奥に、ふたつの影があった。
ひとつは六十くらいの老いた男。
白衣に紫色の八藤丸の文様が薄く入った袴を身に着けている。そしてもうひとつは、今と全く変わらない容姿をしたケヤキだった。
彼らの後ろには、紙垂がかけられた雄々しく屹立する樹木がある。ケヤキの髪が靡くように、木の葉も風に揺れていた。
「はい。泰助さま」
老いた男は、その場に跪き恭しく頭を下げたケヤキの肩に手を乗せて頷く。そして深く息を吐いた。
「君に名を与えることを”あいつ”に話したんだ。とても悔しがってね、『今すぐ俺にも寄こせ』と喚くんだ」

