ケヤキは「兄弟がたくさんいた」と過去形にして言った。
私は兄弟がいないからよく分からないのだけれど、普通は過去形で言い切るのではなく、「兄弟がいる」と言うものなのではないだろうか。
私の気にし過ぎなのかな。
肩に乗せた子どもと楽しそうに会話するケヤキの横顔を見る。
やがて、その子のお兄ちゃんが慌ててケヤキの側に駆け寄ってきた。ケヤキの肩から降りた弟の頭に拳骨を落として、無理やり頭を下げさせる。
丁寧にお礼を言ったしっかり者のお兄ちゃんに手を引かれ、その子は何度も振り返りながら歩いていった。
「いい兄上ですな」
ふたりが歩いていった方角をぼんやりと眺め、ケヤキがそう呟く。

