「あのおせっかいババめ、まだ早いって言ったのに」やれやれと肩を竦めながら、そう独り言ちた。
「麻ちゃん、『大丈夫、大丈夫』。落ち着いて息を吸ってごらん」
そう言った三門さんが私の背中を軽く擦る。
途端、昨日みたいに突然呼吸が楽になり、暴れていた心臓が元のリズムを刻み始める。震えていた掌に、自分の感覚が戻った。
目を見開いて、自分の掌と三門さんの顔を交互に見る。
「落ち着いた?」
目尻に皺を寄せて尋ねた三門さん。コクリと頷けば、私の頭に三門さんの掌が乗せられる。
「よし、それじゃあ一緒に行こうか」
そして何事もなかったように歩みを再開した三門さんを、慌てて追いかける。
お腹のあたりにそっと手を添えると、じんわり温かくなっている気がした。

