「懐かしい顔だ、このババに良く見せておくれ。ああ、もうこんなに大きくなっていたんだねえ。人の子の成長は早いもんだね」
まるで私の幼い頃を知っているような口ぶりだった。
「……ああ、本当だね。三門の坊やが言っていた通り、ひどくレイリョクが乱れている。可愛そうに、それでつらい思いをしたろうね」
ばくん、心臓が大きく波打った。は、と息を呑む。
目を見開き、おばあさんのその細い目を見つめる。
全てを見透かしたようなおばあさんの目。
三門さんにも誰にも、まだ何も話していない『あのこと』を、まるで知っているかのような。
なぜ、どうして。
ばれないよう隠そうと、上手くやろうと思っていたのに────。
おばあさんはいたわるように私の頭を撫でると、「しっかり休んで、また元気な顔をこのババに見せておくれよ。それじゃあ、また明晩に」と、足元の三毛猫を抱きあげて本殿の裏へと歩いていく。

