「……っ、葵! 葵!」
翌日の太陽が空高くに上るころ、私は名前を呼びながら河原沿いを走っていた。
必死に探すがその姿はどこにもなく、途方に暮れながら辺りを見回す。
葵、どこにいるんだろう。早く「蓬莱の玉の枝の簪」について教えてあげたいのに。
もう一度その名前を呼んだ時、突然背後で足音がした。
「あお……」
振り返ったその先に立っていたのは、驚いたように目を見開いたマサシさんだった。
「葵って、葵ってもしかして君も“あの”葵を探しているのかい!」
両肩を掴まれて勢いよく揺すられる。
「あ、あの」と戸惑い気味に声をかければ、マサシさんはハッと我に返った。
「す、すみません」と慌てて私から離れると、弱ったように首の後ろを擦ったマサシさん。

