本殿に一番近い場所で、お菓子の屋台を開いている女性が、三門さんへ声をかけた。
太い眉毛に、口を開けるたびに見えるお歯黒が特徴的な妖だった。
「こんばんは、青女房。すまないね、でも今日は特別だから」
「特別?」
怪訝な顔を浮かべた青女房と呼ばれた妖は、三門さんの後ろにいた私を見つけるや否や、「まあまあまあ!」と興奮気味に身を乗り出す。
「麻だね、あのちびっこの麻なんだね!」
「冬休みの間はうちの巫女さんだよ」
「麻が結守神社の巫女さま! こりゃたまげた、なんて嬉しいんだろう!」
真っ黒な歯を見せて満面の笑みを見せた青女房。
「ほら、なにそんなところで突っ立っているんだい。こっちへおいで!」

