「こんばんは、子泣き爺。いい月夜だね」
「おやおや、三門さまの後ろから懐かしい匂いがしますぞ」
びくり、と肩を震わせる。三門さんが私の肩に手を置いて、そっと前に押した。お爺さんは目を真ん丸にして驚いた顔になる。
「おおっ、なんと久しい顔じゃ! あんなに小さかったお嬢さんはどこへやら!」
しわくちゃの顔をさらにしわくちゃにして、嬉しそうに破顔したお爺さん。
「懐かしいのう。泣いたことをばれてしまうのが恥ずかしくて、よく『子泣き爺が泣いたんだよ』と濡れ衣を着せられたものだ」
お爺さんは私の頬に手を伸ばすと、そっと優しくなでた。
餅のほっぺは健在じゃ、と喜びながら私の頬を突く。
困惑気味に三門さんを見上げれば、三門さんは楽し気に笑っていた。

