「あれ、珍しいな。葵はまだ来ていないのか」
翌日の学校帰り。
いつも通りの時間に少年は河原へやってきた。
辺りを見回してみるが、普段葵が座っている木の枝や岩の上にもその姿はない。
「おいおい、どこ見てるんだよマサシ」
少女は少年の斜め前に立っていた。
明後日の方向を見る少年の前で手を振る。しかし少年がそれに気が付くことはなかった。
少女の横を通り過ぎ、少年は岩の上に座る。
少女は慌ててその背中を追いかけ、隣に腰掛けた。
「葵、遅いなあ」
「おい、揶揄ってんのかマサシ。そろそろやめないと拳骨だぞ」
握りこぶしを突き上げた少女。
いつもなら「わっ」と声をあげて逃げ出す少年は、逃げ出すどころか、振り向きさえしなかった。

