何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。

少し照れたようにおどけた様子でお母さんは言ったけど、私は着付けの完成度のあまりの高さに、感極まりそうになっていた。

すると、鏡越しに見えたお母さんの顔がにやりとした。


「まあ、男の子とデートなんだから。きれいにしてあげないとって思ってさー」

「……えっ!?」


お母さんの言葉に驚く私。だって、今日はデートだなんて私は一言も言ってない。友達とお祭りに行く、としか。


「なんで……わかったの?」


半ば呆然としながら私が言うと、お母さんはふふん、というような顔をした。


「わかるよー! 何年桜のお母さんやってると思ってるのー? 今日の桜の顔見てたら1発で分かっちゃったわよん」

「嘘……」


そこまでバレバレだったとは。私は苦笑を浮かべるしかない。

まあ、お母さんにバレたところで別に構わないけれど。そのうち言うつもりではあったし。


「ま、今日の浴衣姿見たら、彼もますます桜のこと好きになっちゃうはずよー。だから自信もってデートに行ってきなさい」

「ーーそうかなあ」