舌を出して、いたずら小僧のような憎めない笑みを浮かべる。それがかわいらしくて、私はキュンとしてしまった。

だけど、素直にそう思ったことを表すのはまだ気恥ずかしくて、私は素知らぬふりをする。


「最後に困っても見せないし、手伝わないからねー」


そして私はふざけて意地悪く言った。中井くんは大袈裟に顔をしかめた。


「えー、助けてください。お願いします。折原様」

「なんで夏休み始まる前からそんなこと言ってるのっ。ーーダメです。自分でやってください。予定立ててやればちゃんと終わるはずです」

「ーーはーい」


私が冗談交じりで厳しく言うと、中井くんもそれに合わせて返事をした。

ーー中井くんとは、こんな風に自然に楽しくやり取りをすることが出来た。

一緒に会話をするだけで、どうしてここまで幸せな気持ちになれるのだろう。

そんな風に私が幸福を噛み締めていると、アイスを食べ終わった中井くんが、私の顔をのぞき込んで、こう言った。


「あ、そうそう。明後日の土曜日に、学校近くの神社で祭りあるの、知ってる?」

「へー、そうなんだ。そういえば、電柱とかにポスターが貼ってあったような気がする」


私はこの近くに今年の春引っ越してしたばかり。だから、この地域のローカルな事情についてまったく知らなかった。