何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。

そして、トイレの脇の草むらの中に、トラ子の姿はあった。


「……!」


トラ子の状態に、私は絶句する。

横たわり、荒く呼吸をしているため、胸が激しく上下している。後ろ足は血まみれで、かかとの部分は白い物体が飛び出していた。ーー骨だろうか。


「トラ子! どうしたの!?」


思わず抱きしめそうになるが、下手に動かしたら怪我が悪化してしまうかもしれない。私はすんでのところで堪えた。

トラ子は虚ろな目で私を一瞥すると、にゃあ、と小さく脆弱な声を出した。かなり危険な状態であることは、ひと目でわかる。

交通事故にでもあったのだろうか。こういう時、どうしらいいの? 人間なら救急車を呼ぶんだろうけど、動物の救急車なんて、無いよね……。

頼れる人は一人しかいなかった。私は迷わずにスマートフォンをタップし、彼にーー中井くんに、電話をかける。

中井くんは、すぐに電話に出てくれた。


「な、中井くん! 委員会終わった!? いっ、今大丈夫、かなっ」


気が動転して、呂律が上手く回らない。


『 うんー、ちょうど終わったよ。どうしたの、なんか慌ててない?』


スマホから聞こえる、中井くんの穏やかな声。それを聞いただけで、安心感が湧き上がってきて、私は泣きそうになってしまう。