何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。

しゅんとした顔をし、実くんは立ち上がった。そして渉くんと手を繋ぐ。


「ということで、俺達はもう行くから」

「う、うん。またね」


なんだかいつもより機嫌が悪そうに見える渉くんに、私は戸惑ってしまった。せっかく会えたかと思ったら、さっさと帰ってしまうようだし

ーーいや、でも私彼を怒らせるようなことはしてないはずだし。うん、やっぱり気にしないことにしよう。


「じゃあまたねー、おねーちゃん! トラ子も!」


そして、公園をあとにしようとする渉くんに手を引かれた実くんが、後ろを振り返りながら満面の笑みで私に手を振る。

私は彼らの姿が見えなくなるまで、笑顔で手を振り続けた。


「あの人、折原さんのこと『桜』って呼んでたね」


そして完全に2人がいなくなってから、中井くんがぼそりと呟く。

私にとっては取るに足らないことを指摘されたので、どう反応したらいいかわからず、うろたえてしまう。


「えっ!? まあ、そうだけど……」

「仲いいんだなあって思って」

「あー、なんとなく見てわかったと思うけど、渉くんドイツ人の血が入ったクォーターで。だから、名前で呼び捨てにすることに、抵抗がないんじゃないかなあ?」


渉くんはそういえば最初から私を下の名前で呼んでいた。別に嫌じゃなかったから今まで気にしてなかったけれど。