何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。

笑顔でそう言った中井くんだったけど、何故だか少しいつもと雰囲気が違う気がした。渉くんに対して敵意……とまではいかないけれど、よそよそしさを全面に押し出しているような、そんな感じ。

いや。人当たりのいい中井くんが、そんなことするわけないか。私の気のせいだろう、きっと。

ーーと、思っていたのだけど。


「俺は、渉。こっちが弟の実。桜とは、仲良くさせてもらってる」

「ーー仲良く、ね」


ん? なんだか渉くんと中井くんとの間に、不穏な空気が流れているような……? 漫画で言うと、視線がぶつかって火花が飛んでいるような、そんな雰囲気。

え、なんで? 二人とも初対面でしょ? 敵対する理由はないはずだけれど……。

しばしの間、空間が静寂に包まれた後、「トラ子ゴロゴロしてる!」という、実くんの場違いに明るい声が響いた。

ーーいやいや、渉くんは元々無愛想な人だし、それこそ私の気のせいだよね。うん、そうだ。……そうだといいな。


「ーー実、もう行くぞ」


すると渉くんが中井くんからふっと目を逸らし、相変わらずトラ子と戯れている実くんに、低い声で言った。


「えー! もおー? トラ子ともおねーちゃんとも、もっとあそびたいのにぃ」

「だめだ、母さんのところにも行かなきゃいけないだろ」

「……あ、そっかあ」