何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。


高く元気な幼児の声が、公園中に響き渡り、中井くんが私から目を逸らした。彼の視線から解放された私は、ほっと胸を撫で下ろす。

ーーよかった。あのまま見つめられていたら、火照って倒れてもおかしくなかったよ。


「トラ子ー! ひさしぶりーふわふわ!」


私を危機から救ってくれたのは、登校前のこの公園でよく会う、幼稚園児の実くんだった。彼は私の隣で座り込み、トラ子の喉元を撫で回し始める。

ーーあ。実くんがいるということは……。


「ーー実。急に走ってどうしたんだ……って、桜?」


やっぱり、お兄ちゃんの渉くんも一緒にいたようで、彼は実くんを追いかけて、私たちの近くまでやってきた。


「あ、渉くん。この時間に会うなんて珍しいね」


渉くんが実くんを幼稚園に送っていく朝にしか、2人とは会ったことがなかった。放課後のこの時間帯に会うのは初めてだ。


「友達の家で遊んでた実を、今迎えに行ってたんだ。公園を通ったら、実が桜の姿を見つけたみたいで。っていうか、久しぶりだね」


言われてみればそうだ。最近2人を見かけていなかった。


「そういえばそうだね。最近朝会えなかったから。何かあったの?」