何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。

たぶん、違うクラスの子だろう。さすがに私でも、同じクラスの女子の顔くらい覚えている。ーーたぶん。


「おー、いいね。行く行く。どこ行くん?」

「んー、カラオケかボーリングかなって話してたけど」

「俺ボーリングがいいなあー。体動かしたい」

「運動神経えげつないくらいいいもんね、悠は」


楽しそうに、女の子と話し出す中井くん。会話の調子と、中井くんを「悠」と呼んでいることから、結構親しい仲なのだろう。

中井くんの周りには、人がよく集まる。誰にでも分け隔てない明るい態度、怒ることなんてあるんだろうか?と思えるほどの穏やかな性格。そして整った容姿。人が集まらないわけがない。

自分とは別世界の人間のようで、こんな場面を見てしまうと、私は小さくなってしまう。

私は中井くんとの会話が途中で途切れてしまったことなど、なかったかのように次の授業の準備をし始める。

ーー女の子と楽しそうに話す中井くんは、私のそんな機微など、気付いていないようだし。

まあ、人気者の彼だから。私ばっかりに構っている暇なんて、ないのだ。

ーーあれ。

最近、こんな場面に遭遇すると、決まって胸がチクチクするような気がする。中井くんが男友達と話している時はなんとも思わないけれど。ーー女子と楽しそうに絡んでいる時、限定で。

ーーやっぱり、私。

それがどう考えても、嫉妬という名の感情で。

私。中井くんのこと。

だけどどう考えても、釣り合うわけがない。少し前までぼっちだった私と、人気者の中井くんとは。

馬鹿みたい。そんなこと、考えるなよ。私。

だけど、中井くんと笑顔で話す、名前も知らない女子に対しての私の醜い嫉妬は、どうしても消えてくれなかった。